■ 【請負開発案件】システム開発 導入事例 - リキシャ




株式会社リキシャ(以下 リキシャ) 代表取締役社長 桜井克己氏に、自社サービス基幹システムの開発パートナーに日進を選んだ経緯とその評価について詳しくお話し頂きました。


※ (リキシャについて)
リキシャは、旅行会社向けサービス企業である株式会社エフネス(以下 エフネス)のグループ会社として、ランドオペレーション、エクスペディア代理販売などの事業を展開しています。2016年2月に設立。



■ 日進に自社サービス基幹システムの開発を依頼


― リキシャは日進にどんなシステム開発を依頼したのでしょうか。

リキシャでは「エクスペディアによるホテルや航空券の予約を、旅行会社向けに卸販売すること」を主要な業務の一つとしています。日進には、そのためのWebシステムである「Rikisha EasyREZ」のスクラッチ開発を依頼しました。


■ リキシャのエクスペディア事業

― 「エクスペディアを旅行会社に卸し販売する」とは具体的には?

具体的には次のような形になります。

  1. エンドユーザーから旅行会社に旅行手配の依頼が入る。
    (※ 出張やコンベンションなど法人需用が主体)
  2. 旅行会社は、Rikisha EasyREZを介してエクスペディアにアクセスし、ホテルや航空券を予約する(※ 予約のほか、キャンセル、変更なども全て旅行会社が自分で行います)
  3. 旅行会社は、ホテルや航空券の代金をリキシャに支払う

■ ファイナンス付加価値を提供


― その仕組みで「リキシャが商流の間に入ることの価値」を教えてください。エクスペディアを使うのだから、リキシャ(Rikisha EasyREZ)を介さずとも旅行会社が自分で手配すれば良いと思えるのですが。

リキシャが提供する付加価値は一言でいえば「ファイナンス機能」です。リキシャを使えば、旅行会社は日本の一般的な商習慣である「掛け払い」の感覚でエクスペディアを使うことができます。

根本のところからご説明します。

まずエクスペディアはアメリカの会社であり、決済はBtoB、BtoCを問わず「クレジットカード」で統一されています。しかし、日本の法人間取引では「月末締め翌月末払い」のような「掛け払い」が一般的です(※1)。

もちろん旅行会社がエクスペディアに直接アクセスして自分でホテルを予約することは可能です。しかし、その場合、単純化していえば「旅行会社はエクスペディアにクレジットカードに前払い」「顧客である法人への請求は請求書による事後回収」となり、入出金サイクルにズレが生じます。

このズレによる弊害は、「顧客から、ホテルのキャンセル、予約変更などの依頼があったとき」などに顕在化します。たとえば次のような場合です。

  1. 顧客から旅行会社に「3カ月後にフランクフルトのコンベンションに参加するので、ホテルを予約して欲しい」との依頼がはいりました。旅行会社はエクスペディアを使い、ホテルを予約しました。
  2. ところが寸前になって顧客から「コンベンションは延期になった。とりあえずホテルをキャンセルしてほしい」と連絡が入りました。旅行会社はエクスペディアを使いキャンセルを手配しました。
  3. 幸いキャンセルチャージは発生しませんでした。しかし決済手順は、1).いったんクレジットカードからホテル代が引き落とされる、2). 翌月にそれが返金される、というものでした。


この場合、一時的にですが、旅行会社の銀行口座からはお金が先に引き落とされることになります。旅行会社側の担当者は、その一時出金を翌月の入金と突合しなければなりません。このケースでは、キャンセル料金がかかりませんでしたが、もし「キャンセル料50%」などが発生した場合、突合はさらに煩雑になります。

こうした例外処理も月に1,2件であればスポット対応が可能です。しかし大手旅行会社では、月に1000件~2000件もの法人向け旅行手配を行っており、何かの理由で大量キャンセル(あるいは変更)が発生した場合には、業務に支障が出ます。

また一時的にせよ出金があれば、その時期はキャッシュが減少するので、資金繰りにも考慮が必要になります。つまり「旅行会社がエクスペディアで自主予約」した場合、予約数が多くなればなるほど「オペレーション」と「キャッシュフロー」の両面でリスクが増大するのです。

※ 余談ですが、アメリカでは「月末締め」のような「掛け売り請求」の習慣はなく、「納品後ただちに請求書送付」という「ほぼリアルタイム請求」が一般的です。したがってエクスペディアがクレジットカード決済のみであっても、アメリカの旅行会社にとっては、「いつもとほぼ同じこと」なので特に問題はありません(※ この欄は日進によるコメント)。


■ 商習慣のズレによるリスクはすべてリキシャが負担

― そのリスクがリキシャ(Rikisha EasyREZ)を使えば回避できるというわけですね。

はい、そのとおりです。

旅行会社がRikisha EasyREZを介してエクスペディアを使った場合は:

  • エクスペディアへの支払いは、リキシャが行います。
  • 旅行会社は旅行代金を、リキシャ(=エクスペディアの卸元)に支払います。
  • 旅行会社・リキシャ間の決済は、すべて日本の商習慣に基づいた形での「請求書ベース」または「カード決済」で行われます。

キャンセルその他による「一時的な出金(キャッシュ減少」「事務作業増大」などファイナンスおよびオペレーションのリスクは、すべてリキシャが負担します。

このリスク負担が、リキシャが旅行会社に提供できる付加価値です。

なお旅行会社からRikishaへの代金支払いは、与信に応じて「請求書ベースによる掛け払い」「クレジットカード支払い」の二形態になります。

Rikisha EasyREZで旅行会社がホテル等を予約する際、最初それは「仮予約」というステイタスになります。仮予約の期間中は自由にキャンセルできます。そして一定期間を経過した後「ファイナル(本予約)」のボタンを押すことにより、リキシャへの支払いが確定します。

この「仮予約」機能は、旅行会社が直接エクスペディアを使って予約する場合は使えない機能です。エクスペディアには仮予約、本予約等の概念はなく、単なる「予約」があるだけなので、オペレーションの自由度はエクスペディアより高いともいえます。キャッシュフローやオペレーションのリスクを気にすることなく、自由に予約とキャンセルが可能になる、この「仮予約機能」は、Rikisha EasyREZ の最大の特長です。

■ Rikisha EasyREZの概要

― Rikisha EasyREZは具体的にどのようなシステムなのでしょうか。

Rikisha EasyREZのシステム概要は次のとおりです。

項目 内容 備考
システム構成 エクスペディア提供のAPIを使って構築したブラウザベースのシステム  -
予約・キャンセル・変更の自由度 エクスペディア本体と同等(またはそれ以上)

エクスペディアのAPIを使って、エクスペディアのデータベースにアクセスしているので、予約関連の基本機能はエクスペディア本体と同一品質。

(仮予約の機能がある点では「エクスペディア以上」ともいえる)

旅行会社向けヘルプデスク体制 エクスペディア本体と同等 リキシャは、エクスペディアのコールセンターが利用しているバックエンドシステム「Voyager」に直接アクセスできる。これを活用して迅速に回答、対応。
利用者 リキシャと契約した旅行会社
(現在、数百社)
旅行会社ごとにID、パスワードを提供
与信 「支払いサイト」「予約可能金額の上限」は旅行会社ごとに異なります  -
旅行会社からリキシャへの支払い形態 請求書ベース、またはクレジットカード決済 クレジットカード決済の場合でも、仮予約機能は自由に使用可能。

■ 日進を選んだ理由


― リキシャがRikisha EasyREZの開発会社として日進を選んだ経緯を教えてください。

リキシャがRikisha EasyREZの開発を日進に依頼した理由は次の二点です。

理由1.「日本の旅行業界の知識が豊富」
Rikisha EasyREZのユーザー価値は「米国大手予約サイトであるエクスペディアを、日本の商習慣の感覚で活用できる」というものです。したがってRikisha EasyREZには、日本の商習慣がきめ細かく適切に反映されている必要があります(そうでないとシステムの価値がありません!)

日進の担当者は、日本の旅行業界の業務の流れ、実情、決済形式について豊富な知識を持っており、安心して仕事を任せることができました。「日本の決済形式で使えるシステムにしてください」と伝えるだけで、それ以外の細かいことをディテールで依頼する必要はありませんでした。

「旅行業界について豊富な知識を持ち、多くを指定せずとも、『使えるシステム』をきっちり仕上げてくれること」、これが日進に開発を依頼した最大の理由です。

理由2.「提案力」
日進の担当者からは「Rikisha EasyREZは実用第一のインターフェースにしましょう」「エクスペディア本体についている『美麗なデザイン』『動的ナビゲーション』『滅多に使わない便利機能』などは全部削除、画面はとにかくスッキリしましょう」という提案がありました。私たちとしては「これではシンプルを通り越して”素っ気ない”のではないか」と懸念もありましたが、担当者からは「業務システムはデザインより実用性が重要です」と説明があったので、提案を受け入れることにしました。

システム公開後は、旅行会社から「スタッフが毎日使うシステムとしてはベストの使い勝手」「最短の導線で目的のホテルを探せる」と高評価を得ることができました。 Rikisha EasyREZは2011年11月に一般公開し、おかげさまで順調に利用企業を拡大しています。この「エクスペディア卸事業」は、アジア圏での販売を拡大したいエクスペディアと、ホテル予約を事業として確立したい当社の思惑が一致して始まったものですが、それがRikisha EasyREZの開発・公開により、一気に現実化することになりました。

Rikisha EasyREZは、その後も、ユーザーの声を取り入れながら改善を続けています。最近は、「ホテルのマップ検索」という機能を追加しました。


■ システム公開後も、各種改善を継続

― 「ホテルのマップ検索」とはどんな機能ですか。

Rikisha EasyREZ開発当初は、「都市と宿泊日を選ぶと、そのとき空室のあるホテルが一覧表示される」という簡易な形式でした。しかし、この方式の場合、お客様からたとえば「ニューヨークの○○ストリート付近のホテルを」と指定されたときに、どのホテルがそれに該当するのかがすぐに分かりません。

そこで日進に追加開発を依頼し、検索結果のホテル名のそばにマップボタンをつけて、簡単に地図を表示できるよう改善しました。こうすれば、現地の地理に詳しくないオペレータでも、条件に合うホテルを見つけることができます。


■ 今後の展望

― 今後の展望をお聞かせください。

Rikisha EasyREZによる「エクスペディアにファイナンス付加価値をつけて卸し販売する」という事業はおかげさまで予想を上回る伸びを見せています。このことがエクスペディアからの信頼獲得につながり、2015年にはエクスペディアのコールセンターのバックエンドシステム「Voyager」を開示してもらうことができました。

これにより従来は、エクスペディアのコールセンターに電話で問い合わせていた複雑な案件を、Rikisha EasyREZを使って対応が可能になり、リキシャから旅行会社への対応スピードを改善することができました。

このような好循環が幸いし、先月2016年2月には、「エクスペディア事業」を担当していたエフネスの事業部門を分社独立させて、新会社であるわたしたち「リキシャ」が誕生した次第です。 リキシャは今後ともランドオペレータ企業として、お客様である旅行会社に確かな価値を提供していきたいと考えています。日進には、そうした弊社の取り組みを、基幹サービスシステムであるRikisha EasyREZの継続改善を通じて後方支援いただくことを希望します。今後ともよろしくお願いします。


写真右は、日進 営業担当 淺山

※ リキシャのホームページ (簡易サイト)
※ 取材日時 2015年3月
※ 取材制作:カスタマワイズ